5.最難関の四天王金貨に挑む

 私は暇さえあればコインディーラーやコインショウに顔を出し、業者の言い値で金貨や銀貨を買い集めました。時間が経つとともに協力してくれる業者も増えました。そして最も人気があると言われていた2002年金貨もオークションで入手してスコアは伸び続けた。一見、コレクションは順調で、金貨完集まで数枚のところまで来たのです。

 ところがコインショウで懇意にしているディーラーから忠告を受けました。

「金貨完集はあきらめた方が良い。市場に出てこない金貨があり、そこでほとんどのコレクターが挫折するんだよ。」

 私はセオリー通り、最も人気の高い2002年(ウナとライオン)を早いうちに押さえました。

 発行枚数は150枚でした。ただ、KMカタログを見るとそれよりも少ないコインが4種類ありました。

1996年 96枚

1997年 97枚

1998年 98枚

1999年 99枚

 くだんの業者は挫折するのはきっとこの4枚がネックになると言っているのだと思いました。

 確かにオークションにもコインショウにも1回も出たことがない。しかも4年連続で発行されたのです。私はこの4枚を四天王と呼ぶことにしました。

 来る日も来る日も四天王の夢を見続けました。買えなくても拝むだけでも拝みたいと思ったのです。

 その思いが引き寄せたのか、意外なところでチャンスがやってきた。

 ヤフーオークションで1999年金貨が出品されていたのです。

 出品価格は150000円で、じわりじわりと値上がりして最終日には220000円になっていた。私はどうしてもこの金貨が欲しくて終了5分前に350000円でビッドを入れました。ライバルもいるかもしれないけれど、5分で100000円以上、上げる人はいないと読んだのです。

 そして、その読みは正しくて、あっさり230000円で落札できました。

この時のときめきは10年以上たった今でも覚えています。

ただ、幸運はそれで終わりませんでした。

私は出品者にダメ元だと思って聴いてみました。

「貴方は1996年~1998年の金貨をお持ちではありませんか。もし、お持ちでしたら譲って頂けませんか」

「持っていますよ。宜しかったらお譲りしましょう。値段は同じで良いですよ。」

足元を見るわけでもなく、非常に紳士的で感じの良い方でした。

 天にも昇る気持ちでした。感謝のしるしに1万円ずつ上乗せして夢にまで見た四天王金貨を一挙に入手することができたのです。

この金貨どうぞ譲って/どうぞ譲って/くださいな

/「いいよ」と頷く/クールな紳士

あいにく、配達されたときは不在でしたが、再配達まで待ちきれず、自宅から自転車を30分も飛ばして本局までとりにいったことを覚えています。

今では四天王金貨は稀少度が評価されて、価格が騰がったため、オークションにも時々、出品されるようになりました。でも、その当時はディーラーに聴くのもはばかられるような幻の存在でした。コイン業界の普遍の法則として価格が騰がれば良いものが出て来るということですが、この取引が先鞭を切ったことになります。

後でわかったのですが、出品者は大変な実業家で、ロシアコインの世界的コレクターでした。どうしたら入手が極めて難しいコインを入手できたかを、ロシアコインを例にして教えてくれた。一言で言うと、オファーが来たら、必ず買う、価格交渉はしないということです。

今でも私はこの方をメンターとしてリスペクトし続けています。

四天王金貨を一挙に入手したことを各ディーラーに伝えると、驚愕の声が上がりました。そして、それ以外のネックコインの入手にも協力してくれて、翌年2014年5月には金貨も銀貨も完集したのです。

 ただ、長いコレクションの歴史を振り返るとこれはまだ2合目に過ぎませんでした。まだまだ素晴らしいコインとの出会いが続きました。

ありがとう/全部揃って/感無量

感謝の心/永久に忘れじ

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