

私は66歳です。コインを集め始めたのは8歳と古く、長い間、日本の現行貨や記念貨を集めていました。
そして、外国コインを集め始めたのは2000年頃です。金券ショップで外国のコインを額面以下で売っていたのですが、イタリア、スペイン等、ラテン系の国々では毎年のように、コインのデザインが変わってとても楽しい。また、年によって発行枚数が凄く少なくて、年度順に揃えるのが非常に大変だったのを覚えています。例えばG7クラスの国ですと、よく使うコインは毎年数億枚単位で発行されるのですが、稀に100万枚以下しか発行されないことがあった。
金券ショップと懇意になると、数万枚もあるコインの中で好きなものを取っていいよと言ってくれて、1日中、手を真っ黒にしながら珍しいコインを探し、見つけると、小躍りしたのを覚えています。1回に10キロ以上の外国コインを購入して、自転車を引いて帰ったこともあります。
自宅はコインだらけになり、家が手狭になって、家を買い替えることになりました。家を購入する目的は表向きは高校に入学する息子の勉学のためのコンディションを整えるためということでしたが、実はそれ以上にコインの保管場所を用意するためだったのは言うまでもありません。
そして、東京コインコンベンションという大きなコインショウで、今まで集めたコインとは比べ物にならないほど珍しいコインを発見したのです。それがスイスの現代射撃祭の2002年の銀貨でした(写真)。発行枚数がわずか1500枚と、今まで集めていたコインとはレベルが違います。
当時は、かなり大きな銀貨でも2000円位で販売されていましたが、この銀貨は9000円で販売されていました。まだ、職業訓練校を卒業して2年後で、仕事も安定していなかったのですが、美しいデザインに魅せられ、清水の舞台から飛び降りる気持ちで購入したのを覚えています。
10年後の2012年、ふとヤフオクを見ると、それが何倍にも値上がりしているのを発見しました。何かの間違いだと思ったのですが、とりあえず売れるものなら売ってしまおうと70000円で出品したら、何と一晩で売れてしまったのです。
すぐにそのコインディーラーのところに行って買い戻そうと思ったのですが、そんな上手い話があるわけがありません(笑)。後で知ったのですが、2002年の銀貨は世界で最も美しい金貨といわれる「ウナとライオン」のデザインで、突出した人気があったのです。私は運命的な出会いだったと思いました。
ウナは売り切れていたけれど、同じ大きさの銀貨が何種類か販売されていました。そして発行枚数は1500枚前後で非常に稀少価値が感じられたし、デザインもとても洗練されていたので、一通り購入しました。
こうして、射撃祭コインのコレクションがスタートしたのですが、金貨は銀貨よりもさらに少なく、非常に稀少価値が高いことがわかりました。私はコインショウに顔を出すと、金貨も銀貨も業者の言い値で買うようになりました。しばらくすると私の顔を見ると、カウンターの後ろから金貨をこっそり出して売り込んでくるようになりました。まだ、評価が定まっていないコインだったので、射撃祭といえば私のところに持ってくれば買うというイメージが出来上がったのです。これはコレクションを進める上では大きな武器だったと思います。